センター紹介
ごあいさつ 私たちの使命 業務内容 組織 沿革 公的研究費の不正使用防止について
新しいオープンイノベーション方式によるモノづくり
―第6期中期事業計画の重点方針-
コロナパンデミックもようやく終息段階に達し、これまでの活気のある社会生活が戻ってまいりました。皆様におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
当工業技術センターは1917年(大正6年)に創設され、県内唯一の歴史あるモノづくり技術支援機関として活動し、中小企業のための「技術の駆け込み寺」としての機能強化を第一の目標としてまいりました。本年度からは、さらに「第6期中期事業計画」の重点方針として、以下の三つの指針を掲げています。
(1)「課題発見型技術支援の推進」、すなわち企業から持ち込まれる課題を深堀して、その奥に潜む真の問題点を発見し解決していくこと。
(2)「産業・社会の課題解決に資する技術シーズの蓄積と発信」を行うこと。
(3)「産学官共創によるオープンイノベーションの促進」をすること。
この三つの指針は、世界のモノづくりに対する考え方の変化に対応するためのものといえます。一般には、モノづくりを行うには綿密な市場調査を行って目標を定め、これを「クローズドイノベーション」方式と呼ばれる一つの会社や一つの組織の中で課題を解決し、製品開発を目指すものでした。しかしながら、近年の科学技術の高度化により、一つの会社や一つの組織だけでは課題を解決することができず、不足する技術を他から積極的に取り入れて、共同開発により短期間で製品の実現を目指す「オープンイノベーション」方式が発展してきました。
その代表的な成功例として、オランダに本部を置く半導体製造装置メーカーASML社(ASML Holding N.V.)の例が良く知られています。同社は半導体露光装置(ステッパー、フォトリソグラフィ装置)をほぼ独占販売する世界最大の会社ですが、このキーテクノロジーの一つが極端紫外線リソグラフィ(EUVL、Extreme ultraviolet lithography)技術であり、兵庫県立大学の木下教授、渡辺教授らによって1986年に世界で初めて考案された技術です。これを日本の複数の中核企業が「クローズドイノベーション」方式で各社独自に実用化を試みましたが断念した経緯があります。一方、ASLM社は、「オープンイノベーション」方式を採用し、光学系はドイツのカール・ツァイス社の技術を、光源はアメリカのサイマー社の技術を導入して実用化に成功したと言われています。
さらに、最近では、「オープンイノベーション2.0」と呼ばれる新しい開発プロセスが注目されています。これは、アップルコンピュータ社のi-Phoneの開発プロセスに大きく影響を受けていると考えられますが、最初に求める未来社会を想定し、その実現に必要となる技術開発目標をバックキャスト方式で決めるものです。i-Phoneが発売された当時は、いくら市場調査をしても社会からこれが必要であるとの要求は出てこなかったはずで、社会に対して新しい概念の商品を提案して、新しい市場を創出したものと言えます。すなわち、「オープンイノベーション2.0」とは、求める未来社会そのものから皆で集まって広く議論して提案し、それに必要となる技術開発目標を作り出して行くという考え方です。
この「オープンイノベーション2.0」を実現しようとする場合、公設試験研究機関(公設試)の役割が非常に重要となっています。すなわち、一般に、未来へ向けた技術開発目標は、各企業にとっては重要な企業機密となるため、企業主体でこれを実現することは非常に困難を伴うといえます。公設試としてこれを主導し、未来社会で必要な技術開発目標を見出して行かなくてはなりません。
当工業技術センターは中小企業に開かれた県内唯一のモノづくり技術の支援機関として、日頃の企業からの技術相談等を通して、どの様な企業が、どの様な技術シーズを有しているか、そして、どのような技術的課題を抱えているかを広く把握していくことが重要です。これらの技術シーズや技術課題を蓄積しながら、どのような未来社会を構築して行くべきか、そのためには何を開発して行かなければならないかをオープンイノベーション方式で考え、社会を先導していくことが必要です。当センターが長年に亘って蓄積してきた技術力や企業支援のノウハウ、さらには関係機関との連携を強化し、地域産業の発展と育成に向けて、職員一同鋭意努力する所存です。引き続き皆様のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
令和6年4月吉日
兵庫県立工業技術センター
所長
▽過去のあいさつ文
未来社会のあるべき姿を求めて
-新しい価値観に基づく地域産業の発展と育成を支援-
皆様におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。併せて、平素は工業技術センターの各種事業推進に際してご支援とご協力を賜り、厚くお礼を申し上げます。
私共の工業技術センターは大正6年(1917年)に創設された知事直轄の「兵庫県工業試験場」を前身とし、平成29年(2017年)には創立100周年を迎えた歴史あるモノづくり技術の支援機関であります。当センターでは地域の中小企業のモノづくり力の強化を図るため、「兵庫2030年の展望」として3つの目標を掲げています。すなわち、
(1)中小企業の「技術の駆け込み寺」としての機能強化
(2)イノベーション創出に向けた成果指向型研究開発の推進
(3)産学官連携ネットワークによる工業技術センター機能の拡充
であります。
ところで、最近の新型コロナウィルスの世界的蔓延により、人と人との接触が大きく制限されるとともに、革新的なデジタルトランスフォーメーション技術の発展によって大都市一極集中型から地方分散型へと社会構造の急速な変化が進行しています。これにより、人々の価値観は大きく変化し、人々が求める未来社会のあるべき姿も大きく変化してきたように思えます。
最近の新聞記事によると、世界各地から大都市の大気汚染が大幅に改善したという報告が相次ぐとともに、世界のCO2の排出量は2019年度比で約17%減少し、日本では約30%の減少が報告されています。2021年4月までの日本のCO2削減目標は、2030年度までに2013年度比で26%のCO2削減とされていました。当初は、この目標でも乾いた雑巾を絞るようなものと実現が危ぶまれていましたが、我々はこの目標を僅か2年で大きく超えて達成してしまったことになります。
今回のコロナ・パンデミックは現代社会の脆弱性を露呈しましたが、同時に、地球環境の改善や、ゆとりある社会構造の構築といった、未来社会のあるべき姿を我々に教えてくれたとも言えます。その結果、人に本当に必要なものとは何か、人の幸せとは何かといった人々の価値観も大きく変化してきたように思います。我々はこのような人々の価値観の変化に対応したイノベーション創出を目指していかなければなりません。
当工業技術センターは、中小企業に開かれた県内唯一のモノづくり技術の支援機関であり、現在のコロナ禍の困難な状況下にあっても、未来社会のあるべき姿をイメージしながら、新しい価値観に基づくイノベーション創出を目指して行かなくてはなりません。そのためにも、当センターが長年に亘って蓄積してきた技術力や企業支援のノウハウ、さらには関係機関との連携を強化し、地域産業の発展と育成に向けて、職員一同鋭意努力する所存です。引き続き皆様のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
令和4年4月吉日
私たちの使命
ものづくり産業と伴走し、新たな価値の創出を支援します。
社会環境が変化する中で、中小企業が事業を持続・成長させるためには、自らの強みを基盤に新たな知識や技術を組み合わせ、 あるいは製品・サービスに新たな意味を与えるなどにより、価値を生み出す取り組みが必要になっています。 兵庫県立工業技術センターは、ものづくり産業と伴走し、新たな価値の創出を支援します。
重点方針
- dot
- (1)課題発見型 技術支援の推進
- (2)産業・社会の課題解決に資する技術シーズの蓄積と発信
- (3)産学官共創によるオープンイノベーションの促進
数値目標
対応する目標 | 各年度目標 | |
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課題発見型技術支援の推進 | 技術相談件数 | 10,000件 |
技術指導件数 | 5,000件 | |
利用企業数 | 1,800件 | |
産業・社会の課題解決に資する技術シーズの蓄積と発信 | 研究テーマ数 | 50件 |
技術移転件数 | 700件 | |
産学官共創によるオープンイノベーションの促進 | 大学(高専・専門学校含む)との共同研究数 | 30件 |
共創による研究参画企業数 | 50件 | その他(運営強化) | 外部獲得資金 | 100,000千円 |
兵庫県立工業技術センター第6期中期事業計画(2024~2028年度)
業務内容
1. 技術相談
技術相談 | あらゆる技術相談・利用案内の窓口として総合相談窓口・ハローテクノを開設しています。 まずは、総合相談窓口・ハローテクノ(078-731-4033)にお問い合わせください。技術相談の内容に応じて、機器利用、依頼試験、共同研究等で対応させていただきます。また、センターで対応できない相談内容に関しては、他の試験分析機関等をご紹介させていただきます。 相談対応分野のリスト |
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企業訪問 | センターの研究員による技術支援チームが地域企業の生産現場を訪問し、個々の技術的相談とその解決にあたります。 |
研究会活動の支援 | 県内の中小企業を中心に構成される技術研究会や14の技術研究会の連携組織である兵庫県工業技術振興協議会等の活動を支援しています。 |
最新情報を利用した技術支援 | 各種データベースの活用や、研究機関からの研究報告の収集、関係機関・大学等との連携などを通じて最新の技術情報を収集し、技術相談に迅速に対応します。また、必要に応じ対応可能な機関を紹介することにより皆様の要望にお応えします。 |
2. 機器利用
機器利用 | センターでは保有する機器の大部分を、企業の技術者が自ら、機器を操作して分析、評価を行い、問題解決や新製品開発に役立てていただけるよう開放しています。 |
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依頼試験> | 中小企業が抱える新製品開発、生産工程改善、クレーム処理等の技術的課題の解決を支援する ため、技術相談を受けて、一部の分野では依頼に応じて試験、分析、加工を行っております |
3. 共同研究・受託研究・テクノトライアル
共同研究 | 新製品・技術開発を支援するため、センターが研究者、機器、設備等を提供し、企業と共同して研究開発を行います。 |
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受託研究 | 企業が独力では解決が困難な課題で、センターが保有する機器、技術等で対応できるものについては、試験・分析等を受託しています。 |
テクノトライアル | 企業が独力では困難なアイデア段階での試作や、今後研究するかどうかを見極めるための実験をセンターのノウハウやシーズを活かして行います。簡単な手続きでお申込みができ、費用も低料金です。 |
4. 人材育成
ものづくり基盤技術入門研修 | 企業の技術者・研究者の人材育成を目的に、講義と実習を通して、ものづくり基盤技術に関する基礎技術・知識を身に付けられます。 |
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機器利用研修 | センターが開放している機器について、企業の技術者が利用するのに先立ち、操作方法等を習得するための機器利用研修を開催しています。研修時間は機器により異なります。 |
皮革大学校 | 製革業、革製品製造業とその他の皮革関連企業における製革技術者の育成を目的に、皮革製造に関する基礎知識、生産技術及び皮革関連情報等について、皮革工業技術支援センターにて基礎・専門課程の研修を行います。 |
5. 研究開発
外部資金 | 科研費をはじめとする外部競争的資金を獲得し、技術シーズの蓄積を行っています。 また、国の産学官共同プロジェクトに参画し、実用化を視野に入れた研究開発を行っています。 |
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県単独予算による研究課題 | 県内産業の高度化・競争力の強化を目指した研究を行っています。 |
6. 研究成果の移転推進
研究成果発表会 | センターで実施した様々な技術研究開発の具体的な成果をご紹介するため、研究者自らが発表する「研究成果発表会」を開催しています。また、ポスターセッション、パネルと試作品の展示、交流会なども同時に行います。 |
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展示会への出展 | 県内外で開催される各種展示会等に、研究成果紹介パネル、センター紹介パネルおよび試作品等を展示し、利用促進と成果普及を推進します。 |
7. 技術情報の提供
技術資料の収集・提供 | センターの具体的な研究成果や活動情報については、定期的にオンラインで広報誌を発行しています。また、日本産業規格(JIS規格・平成27年3月まで)が全分野にわたって閲覧いただけます。 |
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講習会・講演会の開催 | 様々な講習会や講演会を開催しており、最新の情報は、ホームページのお知らせ等のページをご覧ください。 |
8. 知的財産の創出と活用
特許の活用 | センターでは、研究開発の過程で得られた成果を特許などの知的財産として保有し、その活用により企業における新技術の構築と新製品の開発に貢献します。保有特許の詳細な内容、技術移転などについて遠慮なくご相談ください。 |
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組織
所長 |
次長(総括担当) 兼総務部長 | ||||||||||||
次長(技術調整担当) |
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総務部 | |||||||||||||
技術企画部 | 技術支援室 | ||||||||||||
材料・分析技術部 | 無機材料Gr. | ||||||||||||
化学材料Gr. | |||||||||||||
食品・バイオGr. | |||||||||||||
生産技術部 | 金属・加工Gr. | ||||||||||||
機械システムGr. | |||||||||||||
電子・情報Gr. | |||||||||||||
繊維工業技術支援センター | |||||||||||||
皮革工業技術支援センター | |||||||||||||
航空産業非破壊検査トレーニングセンター | |||||||||||||
金属新素材研究センター | |||||||||||||
総務部
- 庶務、経理と総合調整等
技術企画部
- 試験研究業務の企画・調整
- 試験研究の評価、進行管理等の研究マネジメント
- 研究員の資質向上及び人材育成
- 産学官連携推進
- 知的財産の活用
技術支援室
- 企業支援の計画策定・実施
- 講習会、展示会及び広報
- 技術相談・助言、人材育成、技術普及及び技術移転
- 技術情報の収集提供
- 業界及び企業ニーズの調査
材料・分析技術部
無機材料グループ
- 無機工業材料の試験研究及び技術支援
- セラミックス・金属材料の試験研究及び技術支援
- 工業材料の分析技術に係る試験研究及び技術支援
- 民間試験分析機関との技術交流
化学材料グループ
- 有機工業材料の試験研究及び技術支援
- 高分子材料の試験研究及び技術支援
- 工業材料の分析技術に係る試験研究及び技術支援
食品・バイオグループ
- バイオ技術、醸造・発酵技術等の試験研究及び技術支援
生産技術部
金属・加工グループ
- 機械加工、金属材料の試験研究及び技術支援
機械システムグループ
- 精密加工、精密計測、制御技術等に係る試験研究及び技術支援
- 機能材料の加工技術と強度評価に係る試験研究及び技術支援
- コンピュータ応用技術に係る試験研究及び技術支援
- 製品の安全性、デザイン等に係る試験研究及び技術支援
電子・情報グループ
- オプトエレクトロニクス技術、電子応用技術、情報技術の試験研究及び技術支援
繊維工業技術支援センター
- 繊維、織物の試験研究及び技術支援
TEL:0795-22-2041
皮革工業技術支援センター
- 皮革、革製品の試験研究及び技術支援
TEL:079-282-2290
航空産業非破壊検査トレーニングセンター
- 非破壊検査のうち浸透探傷(PT)、磁粉探傷(MT)、超音波探傷(UT)のトレーニング
- 国際認証規格(NAS410)に準拠した訓練機関
金属新素材研究センター
- 姫路サテライトとして設置
- 金属3Dプリンタの新素材研究/3D造形技術の中小企業支援
- ひょうごメタルベルトコンソーシアムの拠点
TEL:079-283-4560 (兵庫県立大学 社会価値創造機構)
沿革
- 大正 6年
(1917年) - 工業試験場を神戸市神戸区(現中央区)に創立、三木分場を創設(平成25年に統廃合)
- 大正 9年
(1920年) - 西脇分場を創設(現、繊維工業技術支援センター)
- 昭和 4年
(1929年) - 山崎分場を創設(現、森林林業技術センター)
- 昭和 7年
(1932年) - 出石窯業作業所を創設(昭和43年に統廃合)
- 昭和 9年
(1934年) - 包装試験所(分所)を創設(戦災により焼失)
- 昭和12年
(1937年) - 小野作業所を創設(昭和43年に統廃合)
- 昭和19年
(1944年) - 但馬支所を創設(昭和43年に統廃合)
- 昭和23年
(1948年) - 皮革工業指導所を創設(現、皮革工業技術支援センター)
立杭支所、杞柳品生産指導所を創設(いずれも最終的に昭和43年に統廃合) - 昭和29年
(1954年) - 神戸市須磨区(現在地)に庁舎を新築、移転
- 昭和43年
(1968年) - 工業試験場、機械金属工業指導所、繊維工業指導所、皮革工業指導所に統廃合
- 平成 2年
(1990年) - 工業試験場と3つの工業指導所を組織統合し、兵庫県立工業技術センターに改称
- 平成29年
(2017年) - 創立100周年 記念誌 「兵庫県立工業技術センター100年のあゆみ
(兵庫県工業技術振興協議会50 年のあゆみ)」を発行
公的研究費の不正使用防止への取り組み
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